大人になりたくないって思ってた。

上面だけよくって、内では何思ってるかわかんなくて。

愛想笑いばかりして。

でも、小学生から高校生になって気付いた。

我が儘ばかり言っていられない。

愛想笑いした方が、上手く抜けられる時がある。

上面が良くないと白い目で見られる時がある。

生きやすい生き方がある事がわかって。

大人になって行くんだ。

「ぼーっとしてんね。」

急に声がして、靴箱から出した靴をバタバタと落とした。

「大丈夫?」

江鳩くんは怪訝そうな顔をしてる。

私は頷いて、靴を拾う。