江鳩くんは黙っていた。

それが肯定しているようにも見えて、私は視線を手元のタオルに落とした。

「14の時さ。俺、ピアノのコンクールに連れて行かされた事あんだよね。」

江鳩くんは窓の方を向いて言った。

窓の外は、まだ雨が降り続いてる。

「兄貴の彼女の友達が出るから一緒に来い、とか言われて。多分、チケットが余ったからなんだろうけど。」

溜め息をつく。

「ピアノになんて全然興味ないし、受付の所で待ってようとしたら。」