友達がいないのは、確かで。

でも、その友達の範囲が解らないのも、確かだった。

「志緒ちゃん、具合悪いの?」

そう、例えばこんな風に問いかけてくる菜月(ナツキ)だって友達なのか、わからない。

「ううん。大丈夫。」

「よかった。」

ほっとした表情を見せる。

私が無表情でいるのはいつもの事なのに。

菜月はいつも心配そうな顔をして聞いてくる。

…違う。

きっと、顔色を伺っているんだ。

相手の気分が悪くならないように、伺う。

昔のあの子のように。

「転入生、人気あるね。」

菜月は言う。

「顔がいいんじゃない。」

転入生というのは、江鳩くんのことだった。