「…志緒ちゃん。」

隣から急に呼ばれたから危うく本を落としそうになった。

「何、菜月。」

本を元の場所に戻す。

菜月は言いにくそうに、無理矢理な笑顔を作った。

「何読んでるのかなって思って。」

「ちょっと、見てみただけ。」

私まで愛想笑いが入る。

今はテスト期間でもないから放課後は人が少ない。

「菜月も借りにきたの?」

カウンターに行って、図書カードに判子を押す。

「…うん。」