私は黙って、波崎の向いている方を見た。

こっちを真っ直ぐみている他校生の女子がいた。

最初は誰だか、わからなかったけど。

「涼奈…。」

波崎が呟いたので、思い出した。

中藤涼奈(ナカトウスズナ)。

15歳の時の親友の一人だった。

涼奈は私達が気づくのを待っていたように、手を振った。

波崎は視界の端で、こっちを見ていた。

私は一瞬迷ったけど、笑って返して。

それから、ローファーをちゃんと履いた。