嫌なこと思い出したな。

指をパキパキと鳴らす。

ピアノを弾く前のクセだった。

「志緒ちゃん、よろしくね。」

漆黒の椅子に座ると、隣から菜月の声がした。

幕が降りているから、薄暗くて見にくい。

「もちろん。」

私は得意気に笑った。

菜月には見えなかったかもしれないけど。

放送が入る。

《これから、二年四組の“コビトとアリス”の演劇を始めます》

妙なネーミングだな…。