私は前に、ピアノのコンクールに出たことがある。

「よっ、石月。」

あの子が落ちてしまってから。

「演劇でピアノやるんでしょ。」

もう何もかもにやる気がしなくなって、ピアノをやめてしまった。

「それまで一緒に回ろーよ。」

バシッと響くくらいの音で背中を叩かれた。

さっき自販機で買った野菜ジュースのストローが口の中に当たる。

「いったいなぁっ。なんなのっ。」

私は顔をしかめた。

「だって。人の話、聞いてないんだもん。」

波崎は口を尖らせた。

私は野菜ジュースを飲んで、近くのゴミ箱に捨てた。