「ありがと。」

私は返す。

「エリーゼのために、だろ?その曲、兄貴が好きだったんだよ。」

「お兄さん、ピアノ弾いてたの?」

「いや、彼女が出来た時から好きだって言ってたかな。彼女が好きだったんじゃん?」

あの子と同じ。

エリーゼのために、が好き。

「一途だったんだ。そういえば、名前なんて言うの?」

「江鳩竜也。」

君の名前でなくて。

「お兄さんの名前。」

「江鳩由也(エバトユウヤ)。」