私は、“エリーゼのために”を弾き始めた。

まだ覚えていたなぁ、なんて感心。

ドアの開く音。

私はすぐに手を止めた。

「あ。」

江鳩くんだった。

「その曲、続けて。」

穏やかな口調で言われたから、私は続けた。

音楽室にピアノの音だけが響く。

最後まで弾いて、指を止めたら江鳩くんは

「すごい。」