私は近くの椅子に座ってお弁当を広げた。

江鳩くんと初めて会った時のことを思い出す。

「志緒ちゃんが作ったの?」

私は首を横に振る。

「お母さん。」

「志緒ちゃんのお母さんって、仕事してるんじゃないの?」

「作って、仕事行くの。」

私はおにぎりを差し出す。

「いる?」

「うん、お腹空いてたんだ~。」

おにぎりを持つ菜月は犬みたいに嬉しそうな顔をしていた。