狩野は町をぶらぶらする。
昔からずっとこの町で過ごして来た。
今年で十七年目になる。
もはや、この町も自分の庭みたいに何処に何があるのか。
誰が何処にいるのかが分かるようになった。

「よう、兄ちゃん」

道を歩いていると一人の男に声をかけられた。

「ん?俺?」
「そう、兄ちゃんだよ。どうだい?見ていかないかい?」

その男は道端にシートを敷き、その上に商品を置いていた。
主にアクセサリーの類が多い。

「あんまり、見ない顔だね?」

狩野が言う。

「まぁな。隣町から商売に来てるからな。それより、これなんてどうだい?」

男が差し出したのは一つのネックレス。
真ん中に複雑な模様が作られてる。

「へぇ。いくら?」
「八百…いや、六百で良いよ」

狩野は財布から小銭を取り出すと男に渡す。