PLAY-ROOMS 
 奴隷彼女( 1 )

「鞄を預けてください。私が持ちます」
 やけに澄み切った声が、アスファルトの上に響く。じりじりと照りつける日差しが反射され、今にも空間が歪められそうな暑さだ。暦の上では、本格的な夏場はまだ先だというのに。これも温暖化ってやつの影響だろうか。
「聞いていますか? 鞄を、渡してください。私をなんだと思っているのですか」
 そんな暑さの中でも、はっきりと聞こえてくる声。唯一の清涼剤とも言える。ただ、かまわず歩き続けることにした。今は、こいつに構っている余裕はない。一刻も早く家へとたどり着きたいのだ。冷蔵庫の中には冷えた麦茶もある。
「ちょ、ちょっと。歩くのが早いです。なんで速度を上げるんですか!」
 無視だ。あんな奴俺は知らないし、どうでもいい。そんなことよりも、一刻も早く水分補給だ。
「ま、待ってください! 鞄を! ・・・・・・ご主人様っ!!」
 だんだんと声が大きくなってきた。そして、今の台詞は無視するわけにはいかない。ああもう、なんだって俺が。
「おい、今なんてった?」
 足を止めて振り返る。数歩遅れて、小走りで声の主が駆けよってきた。
「はあ、はあ。ご主人様、歩くの早すぎです。それと、鞄を」
 見るからに水分やら常識やら、その他様々なものが足りてない。制服は汗でびしょびしょで、背中から下着が透けて見えている。息が上がりすぎているせいで、見ているこちらがしんどくなりそうだ。だが、目の前の女はそれでも手を差し出してくる。俺の鞄が目的らしい。