「二階の…203号室、です」
「じゃあ、そこにいこうか」
梧郎さんは、さっさと階段を昇る。
「ま、まってください…!」
「ああ、ごめんごめん…」
振り返って、私の手を握って階段を昇る。
引っ張られるまま、私は唖然としていた。
男の人に手を握られたのは、初めてだった。
「ん?」
「な、何でもないです…荷物もそんなに、多くないんで…」
「ね、杏奈さんはいくつ?」
「私は…今年で、17歳」
「じゃあ、学校も一緒になるね!…俺も17歳、誕生日はまだだけどね」
驚いた。つまり、梧郎さんとは同じ学校に通うことになるのだ。
「うちに兄貴が二人いるんだけど…みんなそこに通ってたんだ」
「へえ…梧郎さんもそれに続いて、なんですね」
「悟郎でいいよ、俺も杏奈でいい?」
「はい」
私はぎこちなく笑った。