値札がついていません、恭介さん。
そんなに露出がある服、着たことないです、梧郎くん。
試着室を開けたり閉じたり。
「だめ、それは悪い虫がつく」
「素材に問題がありますから」
恭介さんが、私の額にでこぴんを放つ。
「杏奈、そんなことない」
「もう、家族なんだから」
その言葉はとてもくすぐったかった。
結果、私は両手にいっぱいの紙袋を抱えることとなった。
「さあ、家に帰ろう」
手を差し出す梧郎くんに、荷物を渡す。
「…杏奈、そうじゃなくて…」
「重いから、お願いしたかったんだけど…」
はあ、と溜息をつく。
でも、その顔は怒っていなかった。
家族ってどんなものだろう…。
私は、あまり期待しないようにしながら車に乗り込んだ。