みっちゃんは何故か憮然としていた。

「お兄さん」

私が呼んだのに、お兄さんは腕を組ながら尚も外を眺めている。伏し目がちで曇った瞳。近付くと柔らかい、いい匂いがした。

「お兄さん、お兄さん」

私はわざとお兄さんの視界に入るように少し覗き込むような姿勢をとった。するとようやくお兄さんの小さく曇った黒目は私を捕らえた。

「うわぁっ!」

腰を抜かしそうなくらい驚いている。

「お兄さん、さっきみっちゃんのこと撮ったでしょ」

私はみっちゃんを指差してお兄さんに気持ち高圧的に言った。

「…わかば?」

みっちゃんが心配そうに私とお兄さんを見ている。私はこれまでに見せたことはないと思われる、とびきりのスマイルを送った。みっちゃんに心配されるのは、私にとってかなり汚点なんだから。