トントン―

肩を叩かれ後ろを振り向くと、百合がにこっと笑っていた。

そして差し出された手には一枚の紙きれ。

私はそれを受け取り、前を見直した。


『ちゃんと約束守ってね?』


約束……

ただ口だけの約束。

第三者から見ればすぐに破れる約束だと思う。

もちろん私だって破りたいもん。

でも、今の私には無理…

百合の我が儘を聞いてあげなきゃいけない立場。

守ってあげなきゃいけないんだ……

ずっと自分に言い聞かせてきた。




キーンコーンカーンコーン


「じゃあ今日の授業は終わりだ。各自、解散」


どれくらいの時間が経ったのだろう。

一時間目からどう過ごしたのか、さっぱり覚えてない。

ずっと…何考えてたのかな


「葵!あたし今日用事あるから先帰るね!」

「あ、うん。ばいばい」



百合は鞄を持ち、教室を出て行った。


「ふぅ……」


思わずこぼれるため息。


「大丈夫か?」


「真島くん…ありがとう。本当にごめんね?」