「お母さん……」



私はまだ何も分かっていなかった。



分かっていないからこそ、あんな事件が起きてしまったのだろう……


もし、私が気付いていたら……


誰も傷つくことはなかったはずなのに………








―――…



「んっ…朝、かぁ」


カーテンの隙間から入る朝日の光が私を照らす。

今の時間は、七時。

そろそろ準備して行かなくては遅刻になってしまう。

私は急いで自分の部屋に戻り、制服に着替えた。

携帯も充電器から外し鞄の中に入れる。


鏡の前で念入りにチェック。


「よし、今日もがんばろう」

鏡に写る自分に言い聞かせる。

これが毎朝の日課。

時間がなくてもこれをしなければ、一日が始まる気がしない。



「朝ごはん…いらないよね」

昨日も食べなかったけど、生きてられるよね。


「いってきます」


誰もいない家なのに。
返事なんてかえってくるはずないのに。

どこかで期待してるのかな?

馬鹿みたい、私…。