「翔くん、今日のお弁当はね……」

 ふわふわの髪が踊るようになびく女の子が、大事そうにかばんを抱えている。

そしてそれを温かく見守るように笑う、彼の姿。



 わたしに向けたものではないのに、ぎゅっと胸を締め付けられる。


 きっと、こんな思いをしているのはわたしだけじゃない。

翔くんは学年一……ううん、学校一かっこいいもん。



 背も高くて、頭脳明晰、スポーツ万能。おまけに生徒会の役員までするもんだから、校内で目立たないわけがなかった。


「おーい、椎名ぁ?」

 目の前で百合の手がパタパタと振られて、はっと我に返る。

「百合ちゃん、椎名ちゃんはまた彼をみてたのよ?」

 と、愛美はフォローするけども、この二人は翔くんをあまり気に入ってない。


どうしてかはわからないけど、百合いわく、


「胡散臭い」

 と鼻で笑っていた。


 確かに、すこし浮気グセもあるみたいで、さっきの翔君の彼女もこの半年で3人目。


 だけど、ね。

わたしが翔君を好きなのは……それだけじゃないんだ。



 トクンと高鳴る胸。

出逢ったあの日の…息苦しくなるようなトキメキを思い出していた。