『銀の杯に、薔薇の涙を。

涙に満月を浮かべれば、愛を唄え。

涙を浸した十字架に、真紅の誓いを立てよ。』


 つらつらと、むずかしい言葉が並んでいて、最後に呪文のように書いてあった三行。


「銀の杯ぃ~?」

 わたしは想像すらつかず、ない脳みそでシャーペンを回しながら問題を解くわけでもなく、暗号を解くのに必死だった。



 おかげで授業なんてさっぱり頭に入らず、ため息ばかり。


 昼休み早々、いつものメンバーで机を囲おうとしてた。

そんな中、解読はとりあえず諦めてカバンの中の母お手製弁当を取り出そうすると、影がふと落ちる。


 顔をあげると、不思議少女の神崎さんだ。


「欲は、代償が必要」


 そういうなり、颯爽と身を翻してしまった。


「あれ、椎名ってば神崎さんと仲良かったの?」

 なんて箸で指しながらいったのは、お弁当仲間の百合。

「神崎さんってさ、みんなのこと下の名前で呼ぶよねぇ。フルネームで覚えてるってことかしら?」

 すごーい、とのんきに彼女を賞賛したのは中学からの友人・愛美。


「知らないってばぁ~」


 わたしが愛想笑いを送った二人の向こうに、彼が通る。