何も知らないくせに、わかったような口ぶりの北斗にイライラした。




本当は…、心を見透かされているようで嫌だった。


「あ…、なんか携帯鳴ってねぇ?」


黙り込んだ私をよそに、そう言いながらキョロキョロと周りを見回した。


「携帯、鳴ってるみたいだけど」


ソファの近くを指差す北斗。


ボーっとしていた私は我に返って、携帯を取りに行って開いた。



誰からかはわかっている……。


今日はメールじゃなくて着信だった。


北斗のことが気になったけど、私は電話に出た。


『里緒菜?久しぶりだな。元気か?』


優しい長谷川さんの声。


「うん、元気だよ」

『ちゃんとご飯食べてるか?里緒菜は細いんだし、夏バテするぞ』

「うん、大丈夫」

『もう少し寂しい思いさせるけど…』

「ううん。大丈夫だよ」

『お土産、楽しみにしてて。麻衣ちゃんにも買って帰るから』

「ありがとう…。ごめんね」


電話は5分くらいで切れた。