インターホンの甲高い音が響くマンションの一室のドアの前に、緊張した面持ちで狭間コウスケは立っていた。



「だれ〜?」



張りや生気を感じさせない声が返ってくる。



「オレだよ。コウスケ」



コウスケがそう言ったとほぼ同時くらいの早さで勢いよくドアが開いた。



「コウスケ!久しぶりだなぁ。お前、元気か?」



コウスケの兄はいつもと変わらない笑顔で弟を迎え入れた。



薬が入っている状態の時は、まだ正常と呼べる範疇。



目がヤバくなるのは、薬が切れかかっている時だ。



「俺は元気だよ」


「そりゃよかった」


「ちょっと、兄貴に話したい事あって来たんだけどさ…」


「じゃぁ、上がれよ。連れもいるけど」


「外で話したいんだ」



コウスケの兄貴は、怪訝そうな表情を見せつつも、快くコウスケに従った。



「レツー、ちょっと出てくるわ」



同居人に外出を告げると、さっさと靴を履き、コウスケと共に玄関を出た。