鉄の階段をのぼり、自分の部屋のドアの前に立った時、背筋に冷たいものが走った。



鍵穴がズタズタに傷つけられていた。



「何…コレ…」



驚きと恐怖を一気に感じた為か、声がかすれてしまった。



「まぁたぶん、同一犯だろうな」



アラタは冷静に言った。今のあたしにはこの冷静さが、頼もしかった。



「最悪…」



そう言ったのとほとんど同時に誰かの視線を感じた。



もちろん、アラタの視線ではない。



視線の主を探そうとキョロキョロしていると、階段の下で黒い影が走り去っていくのがわかった。



「なんだよ、あいつ。追うか?」



アラタも黒い影が動くのを目撃していたらしい。



「暗くてよく見えなかったね。危ないから追わなくていい」



あたしはアラタにウソをついた。



本当は…



一瞬だけ見えた黒い影の正体が誰だけわかっていた。



間違いなく矢崎ユウリ。



嫌われてるとは思っていたけど、まさかこんなこと…



今までの事、全部あんたの仕業なの…?