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あたしは街中で泣いていた。
「…どうしたんや?」
みんなみんな、あたしを素通りして行くのに、貴方だけでした。
…あたしに手を差し伸べてくれたのは。
「なんかあったんか。話してみい」
あたしは黙っていた。
「…まぁ、とりあえずこれで涙拭き。泣いてたら可愛い顔が台無しやで」
彼はしゃがみ込み、ハンカチを差し出した。
ハンカチを受け取り、渋々涙を拭いた。
「学校でなんかあったん?俺が聞くで?」
男は20歳くらいの人で、黒のスーツを着ていた。
顔はイケメンだった…。
「…なんにもないです」
「じゃあなんで泣いとるん?言ってみ」
「大したことじゃありません」
と言って、あたしは後ろに振り返り、歩きだした。
「待てや!」
彼は走ってきて、あたしの肩を掴んだ。
「…なんかあったんやろ。…俺じゃ信用でけへんか?」
「……」