『う…ん…』

楓はそっと目を覚ました。

『病院…か…』

いつの間にか私服姿になっている楓は、ゆっくりとベッドから体を起こした。

それと同時に病室のドアが開き、蓮が中に入って来た。

『気がついたみたいだね。楓、大丈夫?』

蓮は心配そうに尋ねた。

『うん…』

楓はそっとうなづいた。

『そっか、何ともないみたいで良かった。それ、レイの服だけどごめんね』

蓮は一安心して言った。

『あたし確か…そうだ、敬大!!蓮君、敬大は?敬大は?』

楓は状況を思い出し不安げに蓮に尋ねた。

蓮は楓から目を反らし黙り込んだ。

『蓮君!!敬大は?敬大は?』

そう言って楓は蓮の服を引っ張った。

蓮は楓の手をぎゅっと握りしめた。

『行こう』

蓮は楓の手を引っ張り病室を出た。

『蓮君!?敬大は?無事なの?』

楓の不安をよそに、蓮は黙り込んだまま廊下を歩き続けた。