楓の脳裏には敬大との思い出がたくさん過ぎった。

ウェディングドレス姿で走る楓を、道行く人々は変な目で見つめた。

必死に走り続ける楓…

だんだん呼吸が出来なくなってきて、胸に手を当てて息苦しそうになっていた。

だんだん足がふらつき始め、もう走るというよりは歩いているような感じだった。

『ハァ…ハァ…け…敬大…敬大…』

楓の足は止まり、その場に倒れそうになった瞬間、後ろから追いかけて来た蓮が楓を捕まえて、楓を支えた。

『楓!!何やってるんだ!!心臓が弱いのに何やってるんだよ!!』

蓮は楓を支えながら怒鳴った。

『敬大が…敬…大が…』

楓は胸を押さえながら苦しそうに言って意識をなくした。

意識をなくしている楓の目からは涙が零れていた。

『楓…』

蓮は楓の手をぎゅっと握りしめた。

そして楓は桐丘総合病院へと運ばれて行った。