「無理、みたい。」

優しく志織は微笑む。

「本当はね、話そうって何度も思った。でも、なんだか怖くて。」

「・・・何で怖いって?」

そうだ、何でこんなに彼と話すのが怖いって思うんだろう。
祇園君がどんな人かもよくわからない。なのに私は、彼と話すことを怖がっている。

じっと考え込んでいると志織は渡り廊下ね手すりに腕を乗せグラウンドを見つめた。


「私、祇園って人のことよく知らないけど、わかるよ、話すのが怖いって思うの。」

グラウンドを見つめる志織の顔は遠くを見て、瞼を閉じる。

志織にも話すのが怖い人がいるのかな。

その横顔とサラサラと肩を流れる髪を見ながら感じた。



「別に話したらたいしたこないってわかるんだよね。でも、話をすることで、何かあるかもしれない。傷つくこともある。」

「話した後、相手の反応に傷ついたり落ち込むのが怖いのかな。」

私にではなく、志織は志織自身に問いかけているように話す。でも、すぐにくるっと私の方を笑顔で振り返る。


「でも、私は話したいから話すけどね。」


──話したいから。


「ゆうは祇園と話したい?」

気になるから話したい?
──違う。