5月。まだ暑くはないけど、ぐんと緑が濃くなった気がする。

私はといえばゆっくりと過ごせるようになった。

毎年、人見知りの私にとってこの学年の最初はいろいろ大変だ。
今年は、美加がいてくれたからはじめて同じクラスになった女の子とも思いのほか楽に話せる。クラスで一緒にいれる女の子の友だちができると、やっと落ち着ける。
いつもは、ここで終わりなんだけど、今年は違った。

赤司君、つまり男の子と話せるようになったのだ。

興奮して言う私をそんなことでと志織は笑うけど、私にとっては大進歩なんだ。

赤司君ははじめて話したときも、話しやすいと思ったけど、普通に話せる今なら尚更思う。

背が高くて、銀縁の眼鏡と綺麗な長い指。ふわりと笑う。
志織と同じブラスバンド部でパーカッション担当、ドラムをやっている。

席が前後だから話すということもあるけど、私は志織のおかげだってことを知っている。

「土屋がさ、部活中「私の親友よろしく」ってうるさいんだよ」と眼鏡の彼は笑って教えてくれた。

私だけでなく、クラス全体も女の子男の子同士だけでなく、男女で話すのを見るようになった。