ポンと肩をたたかれ振り向くと、笑って顔をしかめる志織がいた。
「ゆう、ごめん!歯ブラシ見つからなくてさ〜。」
「志織、さっきね「ギケン〜、ノート貸せ〜」

横を勢いよくとおる北君を避ける。ガチャガチャと野球部特有の長方形のバックが揺れている。
北君の後を柑橘系の香りがとおりすぎる。

「ゆう?」

北君を追って自分の教室の黒板を見ると、クラスの生徒が数学の問題を板書している。


「ヤバい。板書、忘れてた。」
「・・・ゆう。」
「じゃ、じゃあ、またね!」

慌てて自分の教室へ。


「ゆう、ファイト〜!」揺れるセーラーを見つめて志織が後ろから小さく叫ぶ。

それに、ピースをして私は教室に入った。


「ノート昼休みのうちに机置いといてって頼んだじゃん!」

後ろの黒板で北君の大きな声が聞こえる。思わずふっと笑ってしまう。


なんとかスペースを見つけて板書する。3行程度で書ける数式でよかった。

「お前がいけないんだろ!」

真横から聞こえてくる声に顔を挙げるとギケン─祇園君が顔だけ後ろに叫んでいた。

すでに私と祇園君の間の問題は書き終えられれていて、教壇にいるのは2人だけ。