僕達の出会いは、映画の様なベタなシチュエーションだった。
良く憶えている。
日曜日だった。
朝から雨が降っていて、外出するのが億劫なくらいで、とり貯めておいた映画を観たり、溜まった新聞をまとめたりして過ごしていた。
夕方になって、ワイシャツをクリーニングに出し忘れていた事を思い出し、仕方なしに車のキーを取った。
雨足は弱まる気配はない。見慣れた交差点で、赤信号に捕まり、余計にため息が出る。
右にウィンカーを出したところで、突き上げられる衝撃と同時にドンと後方で鈍い音がした。
当てられた、と理解するのにさほど時間はかからず、窓を開けて右前方に見えるコンビニを指差した。
面倒臭い相手でなければいいなと思いながら、コンビニのパーキングに駐車すると、すぐ横に白い軽自動車が止まった。
車の主は傘も差さずに、慌てて駆け寄ってきた。
Tシャツ姿の女性は、申し訳ないといった面持ちで、「すみません、お身体は大丈夫ですか?」
必死に頭を下げている。
別に下心があったわけではなかったが、女性が雨に打たれて立っている姿が居たたまれず、
「入ってください。」
そう言って、車内に入るよう促した。