またも気だるそうな彼女はポスターの方を振り返りながらいった。
「軽音部なんてあったんだ。うちの学校。」
私のぼやきに、彼女はこちらを向き直り首を振った。
「ないよ。だからつくんの。別に部活らしき活動をしたいんぢゃないけど、機材とか、場所とか、その方が便利かなって思ってさ。」
「あぁ、そうなんだ。すごいね。軽音ってことはバンドかぁ。かっこいいね。」
彼女はこくっと、頷くと腕に付けた高そうな時計に目をやり、何かを思い出したみたいに「あ、」と呟いた。
「急いでるんだった。 興味あるんだったらさ、またアタシに声かけてよ。アタシ、2組の 栗原 朱音。 ぢゃあ。」
さっきまでの気だるさは嘘みたいで、ものすごい凛とした声でそう言って、足早に階段を降りていった。
「クリハラ アカネ・・・。 なんだか、かっこいい。」
そこに残された私には、はじめはこわかった朱音の、凛とした声、澄んだ瞳、猫のような気だるさ、
そして 襟足の赤メッシュが
とてつもなくカッコよく感じて、なんだか興奮した。
そう、まるで恋に落ちた時みたいに・・・。