「おっはよ−、ユメ!」
という言葉とともに、思いっきり頭をぶたれた。
「ったぁ−。莉央、あんたねえ。」
「寝ぼけてるみたいだから起こしたげたの−。」
矢崎 莉央(ヤザキリオ)。
高校に入学して一番に仲良くなって以来いつも一緒にいる。
「あ−、はいはい。ありがとう。」
「いいのよ、お礼なんて。」
そう言って微笑むと、巻いた栗色の髪の毛の間からピアスが光る。
一見チャラいけど、実は頭がよくて、帰国子女だとかなんとかで英語がペラペラの優等生。
「それより昨日また呼び出されたじゃん。進路希望調査でしょ? あんなのサクッと適当に書けばい−のに。何度も呼び出されんの、だるくない?」
「そ−ですね−。」
忘れかけてた、いや忘れようとしてた事に触れられ、あからさまに不機嫌になってみせる。
莉央には 通訳になるってゆう、立派な夢がある。
だけど私には何もない。
一限目の始まりを知らせるチャイムが鳴り、最近癖と化した溜め息をつき席につく。
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