一年前と同じように、俺はルシルと一緒に、彼女の家まで馬の手綱を取る。
「みんな、元気にしてるかな」
ルシルは、いかにも気楽そうに話しかけてきたが、後ろにまたがる俺はというと・・。
はぁ~。
本日何度目かのため息。
いや、ため息ってのはちょっとおかしいんだよ。
本当は、胸を張って堂々と挨拶することであって。
なにせ、喜ばしいことのはずなんだから。
でも・・。
「あ~!くそっ。緊張する!!」
突如大声を出す俺に、馬の体がびくんと動く。
「あぁ、ごめん。どうどう・・」
馬は臆病なうえに、敏感な動物だ。
俺の気持ちを察してか、どうもさっきから落ち着きがない。
馬をなだめながら、俺はまたしてもため息を落とした。
俺って、なんでこう情けないんだろうか。
大事な女性を、妻にしたいって挨拶するんだから、
立派な好青年に見えるように頑張らなきゃいけないってのに。
これじゃあ、向こうのご両親も、不安に思ってしまうよ。