“信用してるから”なんて言われて、俺はちょっと苦笑いした。
別に、下心があってルシルを訪ねたわけではないし、
慣れない生活で困ってる彼女を助けてあげたいってのも、もちろん本音だ。
だからって、別にまったく何もなくてもいいって思ってるわけではなくて、
少しはそういうことも期待してたりして・・。
あ、いや、何言ってんだ、俺。
「ありがとう」
一瞬、俺に下心があることにお礼を言われたのかと思って、焦ったけど、
よく考えれば、そんなわけもなく。
「そんな、お礼言われるようなこと、俺まだ何もしてないし」
「そんなことない。私のこと、気にかけてくれてるだけですごくうれしいよ」
ルシルのとびきりの笑顔に、俺の理性が音を建てて崩れそうになる。
けど、ルシルの信用を失うのが怖くて、気持ちを伝えることもできない。
気持ちを伝える--
そう、この頃には、俺はすっかり自分がルシルのことを好きなんだって、自覚が芽生えていた。