相変わらずの母の毒舌に、俺は頭を抱えたが、今回ばかりはここで引くわけにはいかない。
なんせ故郷を離れて、遠い道のりを連れてきたのは、この俺なのだ。
「確かに、ルシルは、多少そそっかしいところはあるけど、でもね」
「心が温かいし、素直でいい子だ、ですか?」
俺が言おうとしたことを、母に先回りされて、俺は心底驚いた。
「え、どうして?」
「ま、侍女の才能は確かにないけどね。
今のリリティス様に必要なのは、必要最低限のことができる型どおりの侍女ではなく、
きちんと心に添って、話し相手になれる人間です。
ルシルには、それがちゃんと備わっている。ご両親のしつけができているのでしょうね」
めったに人を褒めない母が、あのルシルをそんな風に言うもんだから、
俺は、あんぐりと開いた口をなかなか閉じられなかった。