その日の夜、俺は母の部屋をこっそりと訪ねた。


「母さん、俺をリリティス様の部屋に入れないってのは、

どういうことだよ?」


「お前こそ、あのドジ娘に会いたいなら、どうどうと娘の部屋を訪ねたらどうかしらね?」


俺の訪問の意味をはなからわかっていたのだろう。

母は、俺の質問に、間をおかず、答えた。


ドジ娘がルシルのことだってのは、説明されなくてもすぐにわかる。


「ルシルは・・そんなにドジなのかい?」


母に睨まれたら、この王宮の侍女としてやっていくことは難しい。

俺は、自分でも分かるくらい、不安な表情になった。


「少なくとも、侍女としては失格ですね。余計なおしゃべりはするわ、必要な知識に欠けてるわ。

物を壊す才能には長けてるけど、掃除の手順一つ知らない」