リリティス様が機転を利かせてくれたおかげで、俺はカルレイン様に叱られずにすんだけど、
俺は、胸の中にある、もやもやの正体がわからずに、眠れないでいた。
ふと空を見上げると、滑り落ちそうな細い月が空にかかっていて、
俺は導かれるようにそっと中庭に出た。
と、見慣れた少女の後ろ姿。
「おい、早く寝ろよ。明日は早いといっただろ」
俺は、ルシルに近づいて、肩に手をかけた。
その瞬間、ルシルはぎょっとしたように俺を見上げて、すぐに顔を逸らした。
「もう、寝ます・・」
ルシルのかすれた声を聞いて、俺はそれが見間違いなんかじゃないと気づいた。
「ルシル!」
俺は、ルシルの両頬に手をやって、正面から彼女の顔を見つめた。