城に帰ると、入り口でカルレイン様に会ってしまった。


あちゃ~。仕方ない。この忙しいのに、ルシルを連れ出したのは俺だ。


しかし、俺が、口を開く前にカルレイン様が思ってみないことをおっしゃった。


「ご苦労だったな、マーズレン。リリティスの頼みで、ルシルの家まで行って来たそうだな。


ルシル。ノルバスでは、リリティスもお前も、多少嫌な思いをするだろう。

特に、リリティスは、カナン国の王女として辛い立場になるかもしれない。

悪いが、リリティスのこと、よろしく頼む」


カルレイン様に頭を下げられて、ルシルはどうしていいかわからないようだ。

声も出せずに、こくこくと頷いている。


ルシルは“黒鷲なんとか”が、自分の雇い主だと知って、

怯えていたのが嘘のように、

カルレイン様って、素敵ね~、と目を輝かせた。



・・確かにカルレイン様は素敵だけどな。



「おい、さっさと支度しろよ。明日は出発するんだからな」


どうしてこんな不機嫌な声が出るのか、俺は自分でもよく分からなかった。