明日は、いよいよノルバス国に向けて出発する。

皆朝早くからその準備に追われて大忙しだ。

なのに、なんで俺は、こんなことしているんだろう。


カナン城から離れて、馬に揺られている俺は、自分のしていることが信じられない。

馬上で揺られているのは、2人。俺と・・・ルシル。


「あの、ほんとにいいの?家に挨拶しにもどったりして」


「・・・・」


ルシルでさえ、いつもと違うあわただしい城の気配を感じ取ってるのに、

俺は、カルレイン様の許可も取らずに、ルシルの家を目指している。


「すぐに戻れば平気さ」


自分に言い聞かせるように、俺は、力強く答えた。

ふいに、ルシルが俺を振り返る。


「ありがとう。マーズレン」


ルシルの嬉しそうな顔を見て、俺の心臓が急に強く鼓動を打った。


「いや、べつに・・」



俺は、心臓の音を聞かれたくなくて、狭い馬上の上で、できるだけルシルに体が触れないように必死だった。