「ちょっとハヤ?!」
「なに?」
「渉真くんはいいの?」
あっ……
「忘れてた……」
パッと比奈から離れて、渉を見る。
「あれ…?」
「なんか変じゃない?」
ピンクの傘が再び開いて、遠ざかっていく。
クルリと向くのは、俯いたままの渉だった。
「渉…?」
フラフラと帰ってきて、昇降口でへたり込んでしまって、
「言えなかった、か」
と比奈の声が響いた。
渉はコクリと浅く頷いて
顔を伏せた。
俺が見たそのときの渉は、
小刻みに肩が震えていて、
初めて見た弱々しい渉だった。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
設定されていません
読み込み中…