「ちょっとハヤ?!」


「なに?」


「渉真くんはいいの?」


あっ……



「忘れてた……」


パッと比奈から離れて、渉を見る。




「あれ…?」


「なんか変じゃない?」



ピンクの傘が再び開いて、遠ざかっていく。



クルリと向くのは、俯いたままの渉だった。


「渉…?」



フラフラと帰ってきて、昇降口でへたり込んでしまって、


「言えなかった、か」



と比奈の声が響いた。




渉はコクリと浅く頷いて

顔を伏せた。




俺が見たそのときの渉は、

小刻みに肩が震えていて、





初めて見た弱々しい渉だった。