― 苺の新作できたよ。蒼ちゃんに食べてほしいんだけどな。明日の5時マスターのところでどう?―


もちろん行きます、楽しみ。


部活が始まる体育館で返信を送ると、唯がにこにこしながら携帯を覗きこむ。


「楽しそうじゃん」


『稲葉さんがね、苺の新作で来たんだって。明日どうかって、唯も行く?』


「遠慮しまーす。邪魔しちゃ悪いもん」


『何で?』


「何でって、ほんと鈍いよね。蒼衣は」


私達が話しているところへ先生が近寄ってきた。


「なんだか楽しそうじゃねーか。仲良しでいいよな」


「それがね、宮セン。私達二人の仲にライバル出現なんだ」


『???』


「…そうか、蒼衣。がんばれよ」


『がんばれって?…えー、稲葉さんとはそんなんじゃないよ』


「まぁ、でも高校時代は一度しかないんだからいい恋愛をしろよな」


先生は遠くを見つめながら笑顔で言った。


先生の笑顔は大好きなはずなのに…どうしてそんな遠くを見つめるの?


いい恋愛って…そんな優しい表情しないで…そう思ったとき私の感情は抑えきれないものとなってあふれ出た。