「そっか。そうだよな。好きな気持ちは止められないもんな、傷ついても、辛くても自分の気持ちに嘘はつけないか…」


『うん』


「でもやっぱり俺はがんばれとは言えない。蒼ちゃんが辛い思いをするのは見たくはないもんな…」


自分のことを素直に出せるのはそんな稲葉さんの温かさから。


でも…


このままでいいのだろうか。


こんな気持ちのままで。


「告白しないの?」「奪っちゃえば」…稲葉さんの言葉が自分の心の中で繰り返される。
思いを伝えられないさみしさと、思いが叶うことのない苦しみ。


こんな恋は恋と言うのだろうか。


「やめときなよ。そんなの自分を苦しめるだけだよ」


さっきの稲葉さんのことばが自分の心に繰り返して聞こえる。


…そう。そんなのわかってるけど…


こんなの恋と言えるの?


フロントガラスに光る街の明かりや対向車のライトが私の心にシグナルのように問いかけてきた。