「そんなのやめときなよ。はっきり言うけど、かなわない恋じゃない。たとえうまくいったって…自分を苦しめるだけだよ」


しばらく車の中にため息とやり場のない思いが、渦を巻くように漂っていた。


『でもね…』


どうしてかわからないけど、私の心の気持ちを稲葉さんに話しておきたかった。


『…でも、別にこの思いが伝わってほしいとは思わないの。ただ、好きなだけなの。この思いは変えられない』


きっと、稲葉さんに伝えたかっただけじゃない。自分に、自分自身に言い聞かせたかったのかもしれない。


そんな気持ちをきっと稲葉さんは察していたのかもしれない。


優しく、私の気持ちを受け止めてくれるように話してくれた。