校門までの道。

いつものように、ボールがバウンドする音、バッシュが床をこする音、パスの掛け声が聞こえる。

いつもなら愛おしい音なはずなのに、今日はなんだか切なく胸に響く。

「今日も男子はりきってるね」


体育館を覗きこむように唯が言った。


『そうだね…』


先生の姿を見ないように唯に視線を向ける。


唯には先生への思いが知られていないはずなのに、作り笑いと、曖昧な返事をしてしまう。


あっ、峻太の声が聞こえる。


そういえばあの日から峻太とは話していない。


「あのさ、蒼衣…」 峻太に強く握られた手を思い出す。


峻太は何を言いたかったのだろう。


「好きな奴の幸せを自分の幸せと思わなきゃな」 峻太のさみしそうな表情が浮かぶ。


峻太もそんな恋愛をしているんだろうか…


いろいろな思いが頭の中を廻る。


「でねー、その時圭ちゃんが言った言葉がひどくて…ねー、聞いてる」


『…う、うん、それで』


唯のおしゃべりと共に足早に体育館を通り過ぎた。