この痛さは峻太の心の痛さ。そして、私の心の痛さだ。
「ごめん。もう少しだけこのまま…で…」
私は静かに頷いた。
心の傷を癒すように二人で強く強く抱きしめあった。
「忘れた。もう忘れるよ。映画の話も、今のことも…蒼衣への思いも…」
そう小さな声で峻太は言って、私から離れた。
『しゅんた…』
「じゃあな」
いつものように手をあげて別れる峻太。
私は何か言いたかったけれど、何を言いたいのかも、何を言えばよいのかもわからなかった。
一人で自転車を転がしながら、私はこれからどこに向かうんだろうという言いようのない
不安感が襲ってくる。
自分だけ知らない場所に迷い込んでしまったような孤独とさみしさだけが心に残った。