今まで自分と先生のことしか考えたことがなかったから。

先生にすれば、私もみんなの中の一人にすぎないんだよね。


『はぁー』


進級して1ヶ月が経つというのに…私の気分はどんよりしている。


体育館までの続くテラスの通路に足をとめ、空をながめた。



空はこんなに澄んだ青色なのに…

「蒼衣、なんか悩みごとかぁ」



先生はいつも私の背中から声をかけてくれる。


「新しいクラスでまだ、慣れないか?そういう時は…」


『そういう時は?』


「バスケで汗流せ」


『えー、何その答え』


先生の会話に思わず笑う。




「そう、笑顔も必要だぞ。気持ちがいきづまって固まった時は思い切り汗を流す。汗とともに心のモヤモヤも流れる。そうすると凝った気持ちもなくなってくる」


『あっ、でも確かにそうかも。バスケしている時っていろいろなこと忘れて集中してるもんね。練習後は気持ちがすっきりしているっていうか…』
思わず話してしまった私…



「そうだろ。俺もさ、いろいろな悩みがあってもバスケをしてるとなんかすっきりしてがんばれそうな気がしてくるんだよな。蒼衣も同じか。分かってもらえてうれしいな」