店から出て峻太と並んで歩く。



「ほんと、大丈夫か?」


『ごめん、心配かけて』


峻太が私の歩幅に合わせてくれているのがわかる。


何も話さなくても、なんだか一緒にいるのが心地よく感じる。



『峻太はバスケが好き?』


「おぅ。でも、何かさ、中学の時とは違うんだよな。と言っても、まだ高校入ってから少しかたってないんだけどさ。なんて言ったらいいのかな。ドリブルしている時に伝わる掌の感覚や、床に響く音や振動までがたまんないんだよね。バスケが愛おしいっていうか…俺って変でしょ」



『うん、変だねー』


「なんだよ。やっぱ、話さなきゃよかった」



『ごめん。うそ、嘘です。変じゃないよ。峻太がバスケを大切に思う気持ちがわかるよ。愛おしいって言う気持ちも…』


「でもさ、宮ゴリの影響もあるんだ。宮ゴリと話してるさ、もっと頑張らなきゃ、もっと俺は出来るはずって思えるんだよね。ポジティブに考えられるって言うのか。俺、あんな男になりてぇってさ」



『…うん』



「蒼衣もがんばろーな」




『…うん』



夜になっているのにまだ、暑さが残っている。


木々からは蝉の声がまだ騒がしく聞こえる。


そんな中で、峻太の優しい声がさっきまでの先生への思いと心の不安を、消していくかの
ように、私に響いていた。