「ふーん、結婚とかしてないのかな?」


唯が何気なく言った言葉に私は息が止まりそうなくらいの衝撃を受けた。


…結婚…


そうだよね。


私ってそんなことも考えたことなかった。


先生のことが好きというだけで本当によかったから。


大人の男だし、社会人な訳だし、結婚とかもあたりまえだよね。


結婚ということは先生に好きな人がいるってことだよね。


当たり前のことを考えて、慌てている私はなんてバカなんだろう。


…落ち着け…


自分に言い聞かせるようにゆっくり深呼吸する。



    結婚してるのかな?



してないとしても彼女はいるよね。



左の薬指に触れてみる。



指輪してなかったな。



でも、あんなにかっこよくて、優しい人なんだから…



空のグラスを口に持っていこうとする私をみんなが見つめていた。





「なにやってんの、空だよ」