「蒼衣…」
先生の声が聞こえる。
私の大好きな先生の声だ。私はハッとなった。
まくれたYシャツの腕に私の残した証が街頭に照らされて見えた。
『…ごめんなさい…先生、ごめんなさい。私帰ります』
そこからどこをどう歩いたかもわからないかった。
雨音が私の過ちを責めるように聞こえた。
…どうして、あんなこと…
先生に自分の気持ちをぶつけてしまった。
でも、それは先生との縮めようのない距離の長さを改めて感じてしまったことになっただけだ…
…どうしてあんなこと…
先生の大切な人もきっと傷つけてしまうことになるだろう。
大好きな先生が苦しむ、悲しむことだけはしたくなかったはずなのに…
私の中にあるのは、後悔だけだった。
雨の中をあてもなく歩いた。
雨に濡れることでそんな嫌な自分を洗い流してくれるじゃないかと思って、歩き続けた。