「実は俺、結婚します。んで、親父にもなっちゃいます」
「えー」「マジ?」みんなは突然のことに驚きの声をあげた。さっきまでの静けさが嘘のようだ。
やっぱり海斗だ。静かなままではいかないか…
「おめでとう。大事にしろよ、彼女。そして、子どもも…」
先生が海斗とがっちり握手をして言った。
「でもね、宮ゴリ。俺さ、子どもができたって聞いた時、正直言ってビビっちゃったんだ。彼女のことは愛してるけど、子どもってさ、実感できなくってさ」
海斗の真剣な表情に、自分が海斗の立場だったらってみんなが想像しているようだった。
「俺さ、どうしようってさ、情けねえけど…悩んで、迷っちゃって…さっき話したチームの存続のこととか、仕事の不安とかでさ、何でこんな時になんて、俺のことしか考えられなくて…ひどいことも言ったこともあった、子どもができたことを全部あいつに責めたり…でもさ、あいつ言ってくれたんだ。俺の子供だから産みたい。一緒に頑張ろうって…」
涙で詰まる海斗に先生は試合の後のように優しく肩をつかんで言った。
「愛されてるな、海斗。大切にしろよ」
「おめでとう」「よかったな」「海斗パパ、がんばれ」みんなも涙目になりながら拍手をした。
「子どもか…」
先生が静かに言った。みんなは騒いでいて気がつかなかったみたいだけど、確かに聞こえた。
とても遠くを見つめながら…