『薬指にはね不思議な力があるんだって。指と指が重なり合うでしょ。他の指ははなれても、薬指だけは…ほらっ…絶対離れない』


先生と重なり合わせた指をひとつずつ離していく。


「あっ、ホントに。すげぇ、薬指だけどうしてもうごかせねー」


『こうやって手を重ねあうことは、思いを重ねあうこと。離れることのできない大切な人とのおまじないなんだよ』


思いが重なり合う。


でも、先生と私は思いが重なり合うことはない。


静かに先生の手から離れて、自分の思いを隠すようにわざとふざけて言った。


『これ、効果抜群なんだよ、家に帰ったら、試してみて。甘えん坊な先生にはぴったりのおまじないでしょ』


「甘えん坊って…お前なぁ…でも当たってるか。奴らには内緒だぞ。特に峻太にはな。大
切な人とのおまじないかぁ…ありがとな」



先生は左手を太陽にむけて見つめながら言った。


「それにしても今日はいい天気だな」